10cm角くらいの小さな絵を描くことが多かった中、久々にF4サイズ(333×242mm)の絵を描きました。大きい絵は色々遊べてよいですね。長年のスランプから抜け出して、とても自由に楽しく描くことができたと感じられた作品になりましたので、記録に残したいと思います。
「大望を抱く」
こちらの絵が出来上がるまでの製作過程を紹介したいと思います。
サイズはF4(333×242mm)の絵です。久々にこのサイズで描きましたが、やはり大きい絵はいいですね! このくらいの大きさだと、自然なにじみを大きく広げて楽しめたり、画面に余裕があるので差し色が映えますね。そして出来上がった時の存在感があるので、すごく達成感があります。
F50の水彩画を描いたこともありますが、あまりに塗る範囲が大きいと水の蒸発と絵の具をのせるスピードが釣り合わず、とても描きにくかった覚えがあります。
画題と画材(大きな筆を持っているか、たくさん使える絵の具があるか)にもよりますが、個人的にはF4~F15くらいが、のびのびと水彩らしい滲みやぼかしを楽しみつつ、細部も描きこみやすいサイズかと思います。コミックイラスト系など小さな絵がメインの展示会ではこんなサイズの絵は需要もないし、スペースもなくて扱いにくいと思いますが…。
ぜひ一度、いつもより大きなサイズで絵を描いてみましょう!
大きな画面に色が広がっているだけでも視覚的に心地よく、画面が広いので小さな失敗もあまり目立ちません。最近のびのび絵が描けない、失敗が怖い、自分の絵がつまらないと感じるようなスランプ気味の方にもおすすめです。
使用画材
紙:ウォーターフォードナチュラル
絵の具は以下の通りです。
- ホルベイン キナクリドンマゼンダ(PR122)
- ホルベイン ブリリアントオレンジ(PO73,PO62)
- シュミンケホラダム カドミウムイエローミドル(PY35)
- ウィンザー&ニュートン コバルトターコイズライト(PG50)
- ホルベイン フタロブルーイエローシェード(PB15)
- ウィンザー&ニュートン ペリレーンバイオレット(PV29)
この6色はお気に入りの6色です。人物を含む絵を描くときにはこの6色をメインで使って、気になる色があれば追加するという感じです。この6色だけでどんな色ができるのでしょうか、気になる方は混色見本付きの記事もありますのでご参考にどうぞ。
ラフスケッチを作る
モチーフにはタチアオイ、それに埋もれるような女性を描こうとなんとなくのイメージはありましたので、具体的に固まるまで色々な写真や雑誌の画像をもとに素描(色彩無しで鉛筆で描くデッサン)で練習していました。※模写のため、元の画像の著作権侵害にならないようぼかしをいれています
チチ?(水彩なのに鉛筆で描くの?)
鉛筆で一本一本線を重ねていくと、物の形や明暗がよく分かってとても勉強になるんだよ。
水彩だと、色をどうしようとか、水加減や画面の乾燥具合など考えなくちゃいけないことが多くて大変だから、まずはじっくり鉛筆でインプットするんだ。
なんとなく、花の構造や女性の表情のイメージがつかめたら自分の絵としてアウトプットしていきます。このときには、手本に画像を見なくても描きたいものが描けるようになっているといいですね。
あくまで理想です、自分にはまだ練習が足りないと思って本番を描き始められない…とはならないでください。多くの方にとって絵を描くことは趣味なんですから、囚われたらいけません(自戒)。
いきなり100%の絵は描けないので、鉛筆で構図を決める→絵の具で色の配置を決める→デジタルで色や構図の詳細を詰めていきます。
線画を作る
デジタルで作った線画を実寸大でプリントアウトし、裏面を鉛筆で塗りつぶします。表面からボールペンでなぞって裏面の鉛筆粉で転写します。転写された鉛筆の線だけでは分かりにくい部分があるので、カラーシャーペンで線画をなぞって色分けします。
人物:オレンジ、葉:緑、花:紫で線画を塗り分けました。
線画ポイント・カラーシャーペン
今回の線画のポイントは、色付きシャーペンを使ったことです。
色鉛筆のようなカラフルな色展開でありながら、色鉛筆と違い消しゴムで消すことができます。描き間違えたときや、あまり線画の主張を出さずに薄くしたいときも消しゴムがかけられるので安心ですね。
ただ、消しゴムで消えにくい場合や、水を塗るとにじんでしまう場合もあります。にじみについては、色による性質のちがいもありそうですし、カラーシャーペンの粉が多く乗ってしまった場合に滲んでしまう気もします。
↑一部滲んでいます。
滲んでも、絵の具で重ね塗りするうちに上書きされて馴染んでしまって仕上がりはあまり気になりませんが、画面の白を生かす絵や、小さな絵の線画だと滲んでしまうのが目立って見えることもあるので注意が必要です。
単色でも売っていますが、線画程度なら減りも早くないのでまずはお気に入りの色味を試すためにも、7色入りで2本ずつくらい入っているこちらのセットがオススメです。
ポッチ?(どうして色付きの線画にしたの?)
線画が込み入っていたり、一目で全体が目に入らないサイズの絵の場合、今見ている線が何の線なのか分かりやすいように色分けしたんだよ。
私が不注意なせいもあるのですが、大きい絵は全体が一度に目に入らないので、「この曲線の感じは植物の葉っぱだ!」と思って塗った部分が実は「人物の髪」だった!ということがあります(笑)
あらかじめ線画の色を変えておけば、塗り間違いを防ぐことができるのでオススメです。
色塗りの流れ~完成
完成するまでの大まかな流れを辿りました。最初のなにがなんだか分からず茫洋としている感じから、少しずつ密度が上がっていく感じを楽しんでもらえたら嬉しいです。
振り返って
こちらの絵は、タチアオイの花言葉の一つ「大望」に着想を得て描きました。
大きな望みを胸いっぱいに抱えて、明日を夢見ているような、
抱えきれぬ大きな望みに陶酔して溺れているような――。
大きな画面ならではの余裕を生かして、遊びの色を入れながらのびのび描けて楽しかったです。
大きな絵だからといって、描くモチーフを増やしたり、描きこみをあげたりしなくて大丈夫!
いつもより大きな絵、ぜひ描いてみましょう!