職場の後輩の結婚のお祝いに贈った絵です。実家を出てしまってわんこに会えなくなるのが寂しい…ということで新居でもわんこのことを感じられるようにと思いプレゼントしました。
「遊ぼうよ!」
こちらの絵が出来上がるまでの製作過程を紹介したいと思います。
ポイントは、10㎝角の小さい絵でも存在感がでるようハッキリ線画で仕上げたところです。線画の存在感と水彩らしい色使いを両方楽しめるようにしました。
ちなみに、この子はボール遊びが好きな元気いっぱいのしばわんこさんらしいのですが、ボールを無くしてしまって以来庭に落ちている石ころを持ってきてなんでもいいから投げてほしがるというエピソードを聞きました。ボールが見つかるといいね、と思い足元にはボールを添えました。
使用画材
絵の具は以下の通りです。
- ウィンザー&ニュートン キャプトモータムバイオレット(PR101)
- ホルベイン ライトレッド(PR101)
- ホルベイン イソインドリノンイエローディープ(PY110)
- ホルベイン イエローオーカー(PY42)
- ウィンザー&ニュートン トランスペアラントイエロー(PY150)
- ホルベイン オリーブグリーン (PY150,PG7,PBr25)
- ホルベイン シェルピンク (PO73,PY6)
- クサカベ シャイニーブリザード (PBk23,PB60,PW20)
仕上げに白線で縁どる用に白色の色鉛筆を使用しています。適度な存在感を出しつつ、色鉛筆らしい柔らかい線で画面になじみつつ表現できるのでとてもオススメです。
昔は白いペンで描いていました。ペンの方が隠蔽性が強いですが、ペンのボール跡が目立ったり、インクが詰まってしまってストレスが多かったです。ペン独特の硬質な線も私の絵では、浮いて見えてしまうことが多かったので、色鉛筆にして大正解でした。
アクリル絵の具の白色も使ってみましたが、白線での縁取りはたまにしか使わないのでほどよい濃度の調節に慣れず、筆で均一に線を引くのも技術力が必要で大変でした。
白色鉛筆がいいのでは…?と思い、画材屋さんで色々な色鉛筆を試し塗りをさせてもらった結果、色ノリの良さと入手のしやすさから、ホルベインを選びました。
線画を作る
今回は小さい絵でも存在感が出るよう線画をきちんと描く予定だったので、まずはデジタル環境で線画を作ります。
転写~下塗り
線画をコピー用紙にプリントして、自作鉛筆カーボン用紙*で水彩紙に転写します。
*自作鉛筆カーボン用紙…コピー用紙の裏を濃いめ鉛筆で塗りつぶし、水彩紙に重ねて線をボールペンでなぞることでカーボン用紙のように鉛筆の粉で転写することができます。市販のカーボン用紙だと、転写した線が消えないので困りますが、鉛筆転写だと適度な濃度で転写されて、転写後の修正が簡単です。(不思議なことに転写したあとに、線画のおかしな部分に気づくことが多いのです…)
鉛筆だと線の主張が強すぎる場合は手芸用の「チャコペーパー」で転写するのもアリです。チャコペーパーで転写した線は水で消すことができます。
線画を転写したら、全体を水で濡らして下塗りしていきます。自然な色の広がりに任せ、色を乗せます。この時点で線画からはみ出しても、最後にはなんとなくまとまるので大丈夫です。
本塗り
①固有色を塗る まずは絶対この色で塗りたい!という部分から塗っていきます。今回はひまわりの花弁にトランスペアラントイエローを絶対使いたかったので塗りました。あと、微妙な毛色や柄の違いは飼い主さんにとって気になる部分だと思うので、写真と見比べながらしばわんこの茶色を塗りました。
未完成の絵を前にするとどこから塗ろう…ってなることも多いですよね。
私は「ここはこの色!」という譲れない色がある部分から塗ります。その中でも、特に面積の大きいところから塗り進めます。理由は、先に大部分の色が塗ってあると後から調節可能な部分を全体の調和を見ながら埋めていきやすく、最終的にまとまった絵になりやすいからです。
私の場合、薄い色から塗っていくと、描きながら薄い状態に見慣れてしまって濃く塗るのに勇気がいったり、いざ濃い色を乗せてみると折角塗った薄い部分のニュアンスのバランスが塗っている時と違って見えて、また塗り足す必要がでてしまったり…ということがあります。
②塗り進める 先ほど色を乗せた以外の部分に色を乗せていきます。このときの色味は、全体の調和を見ながらその場その場で決めていきます。このときも大きい面積の部分から塗っていくと調和がとりやすいです。
③細部を描く 顔のパーツや花弁の筋の描きこみなど細部は最後に塗ります。水彩紙と絵の具によりますが、描きこんだ後から絵の具を塗ると折角の描きこみが滲んだり薄くなったりしてしまうからです。
線画の書き込み
コピックマルチライナー ブラウン 0.1で線画を入れていきます。
一般的な順番は「線画→塗り」だと思いますが、私は「線画下書き(鉛筆)→塗り→線画(ペン)」の順番で描きます。最初にペンの線画がバッチリあると、はみ出してはいけないと思ってのびのび塗れないことがあったからです。また、画面全部に線画が必要ない場合もあります。後から目立たせたい部分にだけ線画を入れることもできるので、この順番に落ち着きました。
ちなみに…、
実は平行して2枚描いていました。採用したのは上の方です。
部屋に飾るのであまり派手じゃないほうがいいと聞いていたため、主張が強くならないよう彩度低めバージョンも並行して描いていました。彩度低めだと、なんだか物悲しく遺影のように見えてしまったので、上の彩度高めを採用しました。
背景
背景を塗って線画を整えて仕上げていきます。
シャイニーブリザードは雲母が入っていて、キラキラの絵の具です。画面越しでは伝わりにくいですが、背景にキラキラを入れるのが好きです。
完成!
額に入れて完成!
贈る相手から額はこれがいい!と指定がありましたのでシルバーのデコラティブ額に収めました。(額縁のタカハシ:一般額 8232) ゴールドと比べてシルバーは額の主張が強すぎずインテリアになじみつつ、絵の格を上げてくれますね。
反省
マット無し額装で、サイズがギリギリ!
額装したときを考えて小さめに描いたつもりでしたが、光の向きによっては額の厚みがある分影が落ちて絵にかかい窮屈に見えてしまいました。マットがあれば見え方のサイズ調整が可能ですが、マット無し額装は思ったより余白が大事ですね。