クサカベさんから新シリーズとなる透明水彩絵の具「チャコールカラー」が発売されました。
黒顔料PBk8(木炭)をベースに、複数の顔料を組み合わせた分離色の絵の具チャコールカラー12色をレビューしました。
- チャコールカラー12
- 使ってみた感想・魅力に感じた点
- 使ってみた感想・難しかった点
- 各色レビュー
- チャコール ブラック(PBk8)
- ★チャコール ナイトブルー(PBk8, PB29, PV15)
- チャコール マリーン (PBk8, PW6, PB29, PB15:3)
- チャコール フォレスト (PBk8, PG36, N/A(顔料名なし))
- チャコール ティーグリーン (PBk8, PG36, PY110)
- ★チャコール ウィロー(PBk8, PW6, PY42)
- チャコール ローズ(PBk8, PW6, PR209, PY110)
- チャコール マルベリー(PBk8, PR122, N/A(顔料名なし))
- ★チャコール ライラック(PBk8, PW6, PV19、PR122)
- チャコール フォグブルー(PBk8, PW6, PB15:3, PV23)
- チャコール セメントグレー(PBk8, PW6, PY110, PG7)
- ★チャコール エボニー(PBk8, PB29, PBr7)
- まとめ
チャコールカラー12

クサカベさんより新発売の分離色セットです。チャコールカラー12色+キラキラ顔料を含んだグロウカラー6色の全18色です。今回は12色セットの方を買ってみました!
画材木炭メーカーの伊研さんと絵の具メーカークサカベさんのコラボで、木炭の端材を使用して作られた透明水彩絵の具です。全ての絵の具に木炭のPBk8の記載があり、どの色も共通して黒の粒子が分離して沈みます。絵の具の溶き方、水加減、塗り方によりますが、思ったより黒粒子が少なく、ホルベインさんのナイトフォールカラーと比較すると黒が少ない印象です。
| 色見本(濃) | 色見本(薄) | 絵の具名 | 使用顔料 |
![]() | ![]() | チャコール ブラック | PBk8 |
![]() | ![]() | チャコール ナイトブルー | PBk8, PB29, PV15 |
![]() | ![]() | チャコール マリーン | PBk8, PW6, PB29, PB15;3 |
![]() | ![]() | チャコール フォレスト | PBk8, PG36, N/A(顔料名なし) |
![]() | ![]() | チャコール ティーグリーン | PBk8, PG36, PY110 |
![]() | ![]() | チャコール ウィロー | PBk8, PW6, PY42 |
![]() | ![]() | チャコール ローズ | PBk8, PW6, PR209, PY110 |
![]() | ![]() | チャコール マルベリー | PBk8, PR122, N/A(顔料名なし) |
![]() | ![]() | チャコール ライラック | PBk8, PW6, PV19、PR122 |
![]() | ![]() | チャコール フォグブルー | PBk8, PW6, PB15:3, PV23 |
![]() | ![]() | チャコール セメントグレー | PBk8, PW6, PY110, PG7 |
![]() | ![]() | チャコール エボニー | PBk8, PB29, PBr7 |
.jpg)
チヨ!(わ、1個の絵の具なのに塗ったあと、色が分かれたね!)

性質の違う顔料(色の粒子)を混ぜて作られているので、塗ってから乾くまでの間に顔料の重たさ・沈みやすさで色が分かれるんだよ
全体的にベースの色も明度・彩度が抑えられて大人っぽい色で作られていて、そこに沈む黒が自然に調和するものが多いです。PW6(白)が入っている色も複数あり、明るめの色もくすみパステルカラーみたいな大人っぽい色です。
上の色見本は表にあてはめようと2cm角ぐらいの画像からとってきた小さい範囲なので分離が分かりにくいかもしれません。下は、2㎝×10cmくらいの大き目な範囲で作った色見本でこちらの方が分離具合が分かりやすいかもです。

公式ページも分離具合が分かりやすいです。
さっそく各色をメインにして猫ちゃんを描いてみました! 色味の存在感があって鮮やかな印象の絵もありますが、全体的にくすみ感のある大人っぽい仕上がりになりました。

使ってみた感想・魅力に感じた点
色々触ってみて、小作品を作ってみたりなどしながら感じた全体的な感想です。それぞれの色ごとのレビューは後の章で述べます。

一言でいうと、モケモケがエモい! グレーっぽい色も多いので動物さんを塗りたくなります。良いところは、またこの後各色レビューで詳述しますね。
使ってみた感想・難しかった点
一方、使うとき気を付けないといけない特徴もありました。(チャコールカラーだから、というより、分離色全般に言える特徴の部分もあります)
塗った時、筆跡が残りやすい


キャルルル!(なんかムラが汚くて、きれいに塗れないんだけど!)

落ち着いて! 絵の具の性質を知って、それに合わせた塗り方をすれば(ある程度は)対策できるよ。
ただ、この絵の具に限らず分離色全般は思った通りに塗るのが難しいです。アナログ画材が生み出す偶然性が醍醐味でもあり、難しいところでもあり…。
汚く見えてしまう不自然なムラは筆跡がそのまま残って生まれることが多いです。例えば、広い面積を塗るときに3回ストローク(縦方向への線)を重ねて塗った例が下の画像です。

一部の分離色は筆が重なった部分がそのまま残りやすく感じます。不均一な粒子径や性質をもつ複数の顔料が組み合わさっているため、特に沈みやすい重たい粒子は早い段階で紙の上に沈着し、画面上の水分と一緒に再び広がりにくくなります。その結果、濃く置かれた部分や、ストロークを重ねた部分の差が、そのまま筆跡として残りやすくなるように感じました。PBk8も沈殿が早く、画面がまだ濡れ
一方、比較用に使用したホルベインウルトラマリンライトでは、ストロークを重ねた直後こそ筆跡が見えましたが、濡れた画面上で顔料が自然に動き、時間とともにある程度均一に馴染みました。
これは、単一顔料であるためもともと粒子の性質が揃っていて差が出にくいことに加え、チャコールカラーに含まれるPBk8と比べて、沈降しにくい粒子だったことも関係していそうです。(PG23みたいな粒子の重たい顔料だと単一で塗っても筆跡が残りやすいです)
筆跡を目立たせにくくする対策としては、たっぷりの水で溶いた絵の具を、大きめの筆で、大きなストロークで一気に塗ることが有効でした。細かく塗り重ねるよりも、顔料が動ける余地を残すことで、分離色特有の表情を活かしやすくなります。
塗った時、筆跡が残りやすい
重ね塗りやリフトで一部の色(黒粒子)だけ取れやすい

キャルルル!(塗り重ねると黒色が取れたんだけど!)

確かに、一度塗った上から塗り重ねると黒い粒子だけ取れやすいね。でも、これはこれで面白いかも!
試しに、一度塗って完全に乾かしてから、部分的にシャワーで水をかけ流してみました。使用した紙はウォーターフォードで、かなり染み込みが強いタイプです。そのため、ベースになっている色味はほとんど流れ出ませんでしたが、PBk8由来と思われる黒色の粒子は目で見て分かるほど流れて取れて色味が変わりました。

一度塗った後に何度も筆を重ねると、黒色の粒子だけが動いてしまうので注意が必要そうです。この絵の具を何度も重ねて塗るより、一度塗ったら後からあまり筆を重ねないで最初の塗りを生かした方が、この絵の具特有の黒粒子感を生かせそうですね。
一方で、この性質を逆に活かすと、塗った後に水で流したりリフトしたときに「色が薄くなる」というよりも、黒の重みが抜けて、明るく感じられるという、少し面白い効果も得られました。紙の性質との相性もありますが、単純なリフトに比べて明度の印象が変わるリフトとして使える可能性もありそうです。
各色レビュー
ここからは各色ごとのレビューです。私の推し色には★をつけています。私のお気に入りベスト3は、エボニー、ライラック、ナイトブルーです。
チャコール ブラック(PBk8)

シリーズの最初の1色として発売された黒色です。ブラックの発売後に、他の11色が増えて12色セットとなりました。単色で使うほか、他のチャコールカラー絵の具に黒粒子を足したいときに使えそうです。単色メインで使ってみるとモケモケした感じが、木炭画っぽくなりますね。(耳や鼻だけチャコールローズを足しています)

手持ちの黒絵の具と比較してみました。

粒子感のある黒といえばPBk11(マイメリ マルスブラック)です。マルスブラックに比べると、粒子が細かくて優しい感じ。色味も、クールな印象のあるPBk6(ホルベイン ランプブラック)、PBk26(マイメリ ニュートラルチント)に比べるとやや暖かさを感じる色味ですが、PBk9(ホルベイン アイボリブラック)やPBk7(まっち ブラック)ほど赤味はありませんね。冷たい黒ではないけれど茶色すぎない、粒子感もあるけど荒すぎない、というところが粒状化したときの上品な大人っぽさにつながっているのかもしれません。
★チャコール ナイトブルー(PBk8, PB29, PV15)

パッケージや絵の具のシールは結構紫っぽく見えますが、塗ってみると青に近いです。薄めたり、いい感じに分離すると紫色のニュアンスが浮かび上がるように感じます。黒い粒子だけでなく、PV15(紫色)やPB29(青色)の粒子も沈んでいて全体が調和しているように感じます。

メインで塗ってみました。ナイトブルーという名の通り、たゆたう夜の空気をそのまま色にしたような上品な青色でした。薄い部分から濃い部分まで濃淡のうつろいに自然な奥行きがあり、夜空の背景や静かな風景、上品な女性のドレスなどに使いたくなる色です。
チャコール マリーン (PBk8, PW6, PB29, PB15:3)

南国の海を思わせるような、やや水色よりの明るい青色に、黒い粒子が沈みます。PW6(白)が入っているので、全体的に少しくすんでだ印象があり、パステルカラーのような柔らかさも感じます。黒が入っていても重たすぎず、明るい色だけど軽すぎない絶妙なバランスです。海、空、水辺、曇り空…、自然の爽やかさをを表現してくれそうです。
作例猫ちゃんも爽やかな仕上がり。水色の猫って変かな…と心配しましたが、少しグレーっぽい色味もあいまって意外と馴染みました。

チャコール フォレスト (PBk8, PG36, N/A(顔料名なし))

冬の針葉樹の森みたいな暗い緑に黒の粒子が沈みます。薄く塗ったときは、澄んだ空気を含んだような淡い緑の中に、わずかに黒のニュアンスが加わり、明度を落としながらも透明感を保った表情がとても魅力的でした。一方で、モケモケ感が強く、筆跡が残りやすいため、濃く塗ったときにきれいに仕上げるのが難しいと強く感じた色でもあります。
作例でも、濃い部分のモケモケ・粒状感と、薄い部分のさわやかな透明感との質感差がやや強く出てしまい、少し浮いた印象になりました。色味そのものはとても好みなので、大きなストロークで一気に置いたり、塗り重ねたりせず、描き方を工夫しながら使いこなしていきたい絵の具です。

チャコール ティーグリーン (PBk8, PG36, PY110)

お抹茶のような黄色よりの濃い緑に、黒の粒子が沈みます。濃い時は黒っぽい印象が強いですが、薄く塗ると、さわやかな薄緑色で濃淡で明度差がつけやすい色に感じます。ツルっと艶のある葉ではなく、水分を含んだ柔らかな苔…、静かに息づく植物、落ち着いた癒しの雰囲気が満ちる絵に使いたい。作例の猫ちゃんもなんだか穏やかで癒し系な仕上がりです。

★チャコール ウィロー(PBk8, PW6, PY42)

乾いた土を思わせる黄土色に、黒色の粒子が沈む色です。
「ウィロー」は柳を意味するそうですが、日本で言う柳色(くすんだ黄緑)とは少し印象が異なり、英語圏でのウィローグリーンはもっと黄色味が強くてくすんだ、黄土色みたいな黄緑色を指すことが多いようです。確かに、この色も黄土色というには少し緑っぽいですね。
この色は、単純な「黄土色+黒」ではなく、明度や彩度が絶妙に調整されていると感じました。PY42単色の黄土色は薄めるとかなり黄色寄りになり、焼き菓子の茶色みたいな明るく可愛らしい表情を見せますが、チャコール ウィローは全体としては青みを帯びた黄土色で、どこか金属のような鈍さと上品さがあります。クサカベさんの分離色、ジオグラフィックも青みがある茶色で好きな色ですが、またそれよりも青みがありますね。好きな色味です。

作例では茶トラの猫を描いてみました。青みを含んだ黄土色のおかげで、いわゆる「可愛い茶色」ではなく、少し精悍でかっこいい印象になります。乾いた土の色、サバンナや砂漠の大地、野生のライオンやヒョウ――、どこか厳しい自然の中の生命感を連想させる色だと感じました。

チャコール ローズ(PBk8, PW6, PR209, PY110)

くすんだパステルピンク。濃淡付けてならべるとメイクパレットみたいでかわいいですね。この色だけみると少し暗いかな? とも思いましたが、他の作例で猫ちゃんの耳や鼻の血色の表現で使ってみると、他の色とトーンがマッチしていてとてもいい感じでした。他の色と組み合わせて、人物や生き物の血色感を描く際にピッタリ。セットのうちの1色として納得の一色です。
作例は白猫ちゃん。薄く塗ったとき、一般的なピンクだと「可愛すぎる」「明るすぎる」と感じてしまいがちな部分も、この絵の具なら、毛の奥に肌の色がうっすら透けているような、リアルな質感になりました。ドライフラワーのように、やさしく、少し懐かしい色です。

チャコール マルベリー(PBk8, PR122, N/A(顔料名なし))

赤紫色に黒の粒子が沈む色ですが、もともとのベースとなる赤紫自体がかなり明度の低い色のため、黒の粒子が悪目立ちせず、全体としてよく調和しているように見えます。
澱の沈んだ年代物のワイン、ビロード張りの古書、絵画に描かれた貴婦人のドレスを思わせる、深く奥行きのある色合いです。スキャンして画面上で見ると、赤味が強くややきつい印象に見えるのですが、実物では紙の質感と相まって、もう少し落ち着いた妖艶で静かな雰囲気の印象です。

★チャコール ライラック(PBk8, PW6, PV19、PR122)

ここから3色、ニュアンスの違うグレーが並びます。まずはチャコール ライラック。
明度も彩度も低く、わずかに紫の色味を感じる灰色です。薄めるとより淡い薄紫が立ち上がり、そこに落ちる煤のような黒粒子が加わることで、ノスタルジックな上品さが際立ちます。淡く色をのせたときの幻想感がとても良いです。
個人的に、すごく上品で大好きな色。幻想的な銀の髪色、青みがかった白い肌に落ちる影、あたたかな春の夜の空気――そんなイメージが自然に湧いてきます。作例のグレーの猫ちゃんも、ただの灰色ではなく、主張しすぎず、でもたしかにそこに存在している気品ある唯一無二の色合いになりました。
グレーはパレット上の色を混ぜれば作れる…と言われがちですが、実際は「ちょうどいい灰色」を作るのが難しく、同じ色を再現するのも意外と大変です。いつも再現できる好きなグレーがひとつあるだけで、楽しくなりますよね。私にとって、ライラックはまさにそういうタイプのグレーだと思いました。

チャコール フォグブルー(PBk8, PW6, PB15:3, PV23)

薄い時は彩度のあまり感じられないニュートラルなグレー、濃く塗ると青みを強く感じる灰色です。黒の粒子とも相性が良いですね。
スーツ、銀食器、コンクリートブロック――どこか人工的で、少し冷たい空気をまとったグレー。
単色で見ると「冷たい色だな」と感じていたのですが、作例の猫のようにチャコールローズと合わせると印象が変わりました。
フォグブルーの冷たさがローズの血色を引き立て、ローズの赤みがフォグブルーの上品さを引き立てて…、相互に良さが出る組み合わせになります。単体だと少し無機質に感じるかもしれませんが、ニュートラルだからこそ他の色と組み合わせることで表情が出てくる、変幻するグレーだと思います。

チャコール セメントグレー(PBk8, PW6, PY110, PG7)

やや黄色みを感じる灰色で、質感もあいまって名前通りセメントを思わせる印象です。フォグブルーよりも親しみやすく、少し色褪せた昔っぽさもあって、どこかノスタルジックな灰色です。
石、灰、曇り空――人工物というより、自然の中にある灰色に近い感じがします。
沈思黙考、おだやかな時間の色。絵に落ち着いた空気を入れたいとき、強い主張をせずに支えてくれそうな灰色です。

★チャコール エボニー(PBk8, PB29, PBr7)

茶色をベースに黒が分離しますが、濃く塗るとかなり黒に寄ります。エボニーは黒檀(こくたん)という木のことで、黒と焦げ茶が縞のように入った和風家具などで見かける、あの深い色のイメージに近いです。
今回の中で一番のお気に入りで、塗った瞬間に「これで動物を塗りたい!」と思いました。今回のチャコールカラー作例が猫シリーズになったのは、この色に背中を押されたからです。自分が描いているはずなのに、どこか絵の具のほうに描かされているような感覚があって――そういうアナログ絵らしい瞬間を生んでくれる画材と出会えると楽しいですね。

色味とモケモケ質感が、豊かな毛並みの動物や、巨木など「質感のある茶色いもの」を塗るのにとても合います。さらに、絵全体をセピア調に寄せたいときにも便利そうです。
「セピア」と名のつく絵の具も好きでいくつか持っています。エボニーは1色の中に、赤みを感じる茶色、青みを感じる茶色が両方があり、深みのあるセピア調表現が1色で作れるのが魅力だと感じました。

まとめ
.jpg)
チヨチヨ♪(にじみ、分離、沈む粒子。きれいに塗るにはちょっと難しいけど、うまくできるとなんか、「世界に1枚」みたいな特別な感じになるね♪)

分離色は、アナログ絵ならではの魅力が詰まった絵の具ですね。
チャコールカラーは全体のトーンも、大人っぽく上品で、やや明度・彩度の低い方向に統一感があります。普通は明るい絵の具のセットが多いですが、このセットで描くことで、少し雰囲気を変えた作品づくりができそうですね。
最後まで読んでいただきありがとうございました!


























