イタリアの透明水彩絵の具「マイメリブルー」。すべての絵の具が単一顔料で作られていて、とても個性的です。全色のうち、この記事では暖色系についてレビューしました。
マイメリブルー貸出企画
株式会社大日本美術工芸様よりマイメリブルー透明水彩絵の具全90色を一か月間お借りして、絵の具の使用感などを試させていただく機会がありました。株式会社大日本美術工芸様、その節は大変ありがとうございました!

貸出企画以前からドットカードで試して気になった絵の具を少しずつ買い足していたのですが、全色を一度に使うことができるという貴重な機会だったので、色々実験して比較して…、と思う存分試すことができ、絵の具の特性をよく知ることができました。
.jpg)
チヨチヨ!(絵の具で遊ぶの楽しかったね♪)

ドットカードでは単色を塗り広げるだけでしたが、今回絵の具のチューブごと貸していただけたので、混色の組み合わせ、沈殿実験、作品制作など色々できました。マイメリブルーが気になっている皆さんの絵の具選びの参考になると嬉しいです。

マイメリブルーの特徴

マイメリブルーの絵の具は、すべて単一顔料で作られているため、顔料ごとの違い、同じ顔料でも製法による色や性質の違いを体感することができます。
チューブタイプは12mlとやや大きめのサイズしかありません。絵の具の種類によって価格は4段階に分かれていますが、量が多いためチューブ一本1700円~3100円(2025年6月時点)とややお高めで、数本買うだけで1万円超えてしまうのでなかなか本数を揃えるのが難しいです。
ただ、1mlあたりで考えると、一番安い価格帯の絵の具で他メーカーと比較してみるとそんなに高価格帯の絵の具ではありません。
絵の具 | 価格(1mlあたり) |
ホルベイン | 49円 |
W&Nプロフェッショナル | 139円 |
マイメリブルー | 143円 |
ダニエルスミス プリマテック | 156円 |
シュミンケホラダム | 396円 |

小さいチューブもあると、一本当たりの価格も安くなって色々試せるのにな~と思います。でも、大きいチューブも私は好きです。すごく些細なことなんですが、フタも大きいのでフタを開けやすいからです(笑)
5mlチューブだとフタが小さくて掴みにくいためか、変にねじってしまってチューブをねじり切ってしまった前科が何度もあります…。マイメリブルーの絵の具は大きいチューブだからかチューブ肩もしっかりしていて、フタも開けやすくねじり切ったことはまだありません。あと、全然減らないのでいっぱい使えて、精神衛生にいいです。
少しお得に手に入れるなら、メーカーセットもオススメです。現時点で発売されているのはイントロセットのみですが、6/17に地名をイメージした新テーマセットが5種類登場します。(アークティック、ベニス、トスカーナ、サハラ、プロヴァンス)
イントロセットは1色ずつ揃えると9900円ですが、ほぼ半額で購入可能です。セット同士には重複する色もあるので注意が必要ですが、欲しい色が入っていればお得に買うことが可能です。




私はチューブ絵の具しか使わないので固形タイプは守備範囲外ですが、ハーフパン(1.5ml)タイプはもう少し価格が抑えられているので揃えやすいかもです。色を試すだけなら全色ドットカードもオススメです。


キャルルル(話が長い! さっさと本題にはいって!)

ゴメンナサイ…。そろそろ本題に入りますが、本題の記事も語りすぎてとても長くなっています。あまりにも長すぎて、暖色編と寒色編に分けました。(寒色編は7月ごろ公開予定です)
今回は、黄色、橙色、赤色を紹介します! 個人的オススメ色には★をつけています。
全色紹介ー黄
マイメリブルーは黄色が多いのが特徴的ですね。1色ずつ見ていきましょう。

No.082カドミウムイエローレモン(PY35) 不透明で強いレモンイエロー。
★No.083 カドミウムイエローミディアム(PY35) 不透明の基本の黄色。自然物に使いやすい、適度な温かみがある。強い発色なのでガツンと効かせたいときから、薄めて優しく使いたいときにも便利。
No.084 カドミウムイエローディープ(PY35) イントロセットのひとつ。不透明のオレンジよりの黄色。単色ではかなりビカビカ存在感がありますが、混色すると、いい感じに彩度と明度の下がった渋い色が作りやすい。同じくイントロセットのうちのひとつペインズグレーとの混色で作る緑は暖かくて優しい風合いがあってすごく好きです。

No.098 インディアンイエロー(PY65) ベニスセットのひとつ。ややオレンジよりの透明な黄色。基本の黄色としても使いやすそう。

ここから3色オススメ色が続きます!
その3色はこちら!↓

この3色に共通するポイントは、メーカー表記では粒状化表記はないものの、個人的にはやや粒状化しやすいと感じている点です。水で溶いた絵の具の沈殿実験では、3色とも見事に沈殿しました。

実際に混色して塗ってみると…、ほんのりと粒状化してみえます。

紙と水加減によりますが、この、ほんのり具合が絶妙で、黄色が細かく粒状化すると、まるでその部分が発光して明るい光の粒が見えているような効果が得られます。黄色に青が分離するのと、青に黄色が分離するのでは印象がちがいますよね。

この、ほんのり黄色粒状化がたまらなく可愛らしいんです…。ものの向こう側の光が透けているような、反射して光っているような…、とても可愛らしく豊かな表現が出せます!
★No.099 ネイプルスイエローミディアム(PBr24) 少し彩度が低くて落ち着いた雰囲気のある上品な黄色。上記のように個人的には少しだけ粒状化しやすい色だと思っています。粒状化したとしてもブツブツが見えるほどではなく、なんとなく黄色の濃淡があるかな?くらいで上品な粒状化です。オススメ色です。

★No.104 ネイプルスイエロー(PY53) マイメリブルーランキング2023のトップ10の中に入っている人気色で、私も本当に好きな色です。個人的に粒状化しやすいと思う色。パステルカラーとして単色使いもかわいいし、基本の黄色として混色して使うと、絵がまろやかに可愛らしくなります。


★No.109 ニッケルチタネートイエロー(PY53)個人的に粒状化しやすいと思う色の黄色の中で一番青みがあります。この青みブルーがほんのり粒状化すると、とても透明感のあるみずみずしい感じになります。オススメです。


さて、 黄色だけでもだいぶ長くなってきたので、黄色まとめ再掲です。

No.112 パーマネントイエローレモン(PY175) 透明で強いレモンイエロー。スキャナでは差が分かりませんが、カドミウムイエローレモンより優しい発色。
No.114 パーマネントイエローディープ(PY227) ややオレンジよりの黄色。存在感があります。水に溶かしたあと沈殿がみられました。個人的粒状化色で、少し暗めの黄色の粒子がみえます。

★No.116 プライマリーイエロー(PY97) マイメリブルーの3原色の黄色に当たります。透明色でクセがない「素直な黄色」という感じで単色でも混色でも使いやすいです。マイメリ3原色黄色をメインで混色するとこんな感じです。たいていの色が作れます。

No.117 ゴールデンイエロー(PY183) なんだか懐かしさを感じる透明な黄色です。プロヴァンス、アークティックセットの両方に採用されています。
No.121 イエローバナジウム(PY184) やや不透明の冷たい黄色。濃く塗った時の凄み?迫力?がすごいです。
No.122 トランスペアレントイエロー(PY150)サハラセット採用色。濃いと黄土色っぽいのに、薄めるとガツンと黄色い不思議な色です。濃淡のグラデーションだけでノスタルジックな透明感があります。
No.124 ガンボージ(ヒュー)(PY139) サハラセット採用色。オレンジっぽい温かみのある透明な黄色です。
全色紹介ー橙
オレンジ色、大体混色で作ってしまうので個人的にはオレンジ単色絵の具になじみがなくて、まだまだ使いこなせていません…。

No.054 カドミウムオレンジ(PO20) 不透明で強いオレンジ色。
No.061 ピロールオレンジ(PO71) ベニスセット採用色。透明で、やや青みのある印象的なオレンジ色。このオレンジで夕焼け空や花を描くと、なんとなくノスタルジックな絵になりそうです。
No.062 パーマネントオレンジ(PO64) 素直なオレンジ色!という感じの透明色。薄めて肌色混色の起点にするとよさそう。
No.112 パーマネントイエローオレンジ(PO62) 黄色よりのオレンジ、マリーゴールドを連想させる色味です。
No.125 オレンジレーキ(PO43)あまり見かけないPO43単色のオレンジ色。オレンジ色を薄めるとやや黄色よりになるのですが、これはあまり色調の変化はなく、そのまま薄くなる感じ。他のオレンジよりブルべ肌のような透明感がでます。


No.224 カドミウムレッドオレンジ(PR108) 朱色よりの強いオレンジ色。不透明。カドミウム系は色が強いので、一色だけでも濃淡がつけやすいです。メーカー表記はないですが少しだけ粒状化しやすいと感じています。(画像右側、ほんのりと赤味がかかっって紙の目の間に沈んでいます)

全色紹介ー赤
赤色も多いです。赤・橙・黄色だけで約半分を占めています。

No.167 パーマネントカーマイン(PR176) あまり見ない顔料のPR176、青みがかかった赤色で濃い状態だとかなり凄みがありますが、薄めるとかなりきれいな薄紅色になります。ステイン性のある透明色。
No.174 クリムソンレーキ(PR149) やや朱色よりの赤色。なんとなく和を感じる色味です。ステイン性のある透明色。
No.176 ローズ(アリザリン)マダー(PR187) パーマネントカーマインと似た色味ですが、こちらの方がややなめらかで、薄めたときにやや黄色味が勝っているので雰囲気は違います。ステイン性のある透明色。
No.178 パーマネントマダーディープ(PR179) ほぼ茶色に近い赤紫。ステイン性がある透明色。肌の影色として使いやすそう。
No.180 キナクリドンレーキ(PV19) PV19というと、次のローズレーキのようなもっと明るい赤色の絵の具のイメージがありますが、なかなか渋い赤紫。ステイン性のある透明色、この色で影をつくると妖艶な感じになります。イントロセットのひとつです。
★No.182 ローズレーキ(PV19) マイメリブルーの中で最も推しの赤色です。ステイン性のある透明色。少し青みがあるので薄めたときのピンクがとてもかわいいです。黄色と混色して作る肌色もかなり透明感があるかわいい肌色になります。PV19っていい顔料ですよね、どの色味も大好きです。

折り返しの再掲です。

No.186 マジェンダキナクリドン(PR202) キナクリドンレーキよりもう少し明るくて優しい色味。ステイン性のある透明色。
No.226 カドミウムレッドライト(PR108) マイメリブルーの不透明カドミウムレッド3兄弟のうちのひとつ。カドミウムオレンジよりやや赤よりで使いやすそう。カドミウムレッド3兄弟は個人的粒状化色です。
No.228 カドミウムレッドミディアム(PR108) カドミウムレッド3兄弟の真紅。個人的粒状化色。カドミウムレッド系を青と混ぜて粒状化させてニュアンスを作ったグレーが好きです。オシャレ。

No.251 パーマネントレッドライト(PR168) あまり見かけない顔料、PR168。透明な朱色です。
No.253 パーマネントレッドディープ(PR177) 高貴さの感じられる真紅。透明色。
★No.256 プライマリーレッド・マジェンダ(PV19) 3回目の登場のPV19、ローズレーキよりも少し温かみがあるように感じます。マイメリブルーランキング2023のトップ10の中に入っている人気色で、マイメリブルー三原色のうちのひとつ。三原色の混色例からも分かるよう、混色にもすごく使いやすい色です。

★No.257 ピロールレッド(PR255) かわいい透明色の朱色。オススメ色です。肌色として黄色と混色するとイエベ肌の素朴さが出て可愛らしいですし、印象的な朱色は花や空の色にも使いたくなります。

No.258 キナクリドンレッド(PR209) 優しい発色の青みのある透明色の赤色。赤色って主張が強いですが、この色は色づきが弱いことと、青みがあることからさっと塗った時の上品さ、透明感がすごいです。淡彩スケッチに使いたい。ベニスセットの一色です。
No.273 サンダルレッド(PR254) ガツンと主張する真っ赤な透明色。ステイン性もあります。濃度が高いと暗くみえる赤色もありますが、これは濃度が高くても暗くは見えません。とにかく赤い。
おわりに

暖色だけなのにこのボリューム!(笑) お付き合いいただいた方、本当にありがとうございます。あなたのお気に入りの色、これからお気にいりになりそうな色はありましたか? また7月ごろ、後半の記事をUP予定です。お楽しみに!