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W&Nドットカード 全109色レビュー

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絵の具老舗「ウィンザー&ニュートン(以下W&N)」のプロフェッショナルウォーターカラー全109色ドットカードのレビューをしていきます。こちらと同じドットカードは残念ながら2024年5月に廃番になってしまったようですが、絵の具各色自体は引き続き販売中ですので、お気に入りの色を見つける参考になれば幸いです。

ドットカードの使い方

ドットカードとは、透明水彩絵の具を少量つけて試し塗りができるように作られたものです。印刷された色見本では分からない、実際に水を付けて伸ばしたときの質感や色合いを自分で確かめることができます。

今回紹介するのは、絵の具老舗のウィンザー&ニュートン(以下W&N)のプロフェッショナルウォーターカラー全109色のドットカードです。ドットカードから気になった色をいくつか買ってしばらく使ってみてからようやく紹介する記事を書こうと思ったのですが、気づけば廃番になっていました…。

絵の知識ゼロの文鳥
絵の知識ゼロの文鳥

ポチ!(色がいっぱい! これ全部の絵の具買っていたらいくらかな?)

W&N絵の具5ml全色セットが9万円くらいで売られていますが、このドットカードは3000円弱だったので、なんともお得に絵の具を試せたものです。

塗ってみるとこんな感じです。水彩紙に絵の具が付いているので、そのまま塗り広げて色を確かめることができました。絵の具の量はこの枠に塗り広げるには十分すぎるほどある場合が多いので、ご自分の好きな水彩紙にも試し塗りができます。

W&Nは今は廃番ですが、他のメーカーにもドットカードがあります。ぜひ気になるメーカーはお得に試してみましょう!

このあとドットカードのお気に入りの色を紹介していきますが、透明性・ステイン性・粒状化などカラーチャートにある専門用語が連発します。意味について詳しく知りたい方はこちらの記事も参考にしてください。(↓)

W&N オススメ色5選

さて、本題のW&Nの絵の具の話に戻ります。W&Nは世界初の水彩絵の具を生み出した老舗のメーカー(W&Nのカラーチャートより)です。画材屋さんにも置いてあることが多く、手に取りやすい絵の具です。

5mlチューブ500~1000円程度という中程度の価格帯で、スタンダードな色味から風変りな絵の具まで幅広い絵の具が揃っています。単一顔料のものが多いので、顔料に興味のある方が顔料の違いを楽しむにもちょうどよいですね。

スタンダードな色も、風変りの色もどの色もそれぞれの魅力がありましたが、これだけ色があると、クセが強い色が印象に残りやすくなりますね。気になった色はいくつか買ってみて、何度か絵を描いてみました。その中のお気に入りの色5選を紹介します。

コバルトターコイズライト ( PG50 ) 半透明、ノンステイン、粒状化

一番のお気に入りの色! 多くの絵で、下塗りやアクセントとして使ってしまいます。

トルコ石を絵の具にしたような目の醒める青緑。他のメーカーでもコバルトターコイズと名前のつく絵の具はあるけれど、緑寄りのPG50と青寄りのPB28があります。個人的にはこのPG50緑色の方が好きです。

コバルトターコイズライトのお気に入りポイントは、下塗りに使うと透明感がでるところです。例えば、肌を塗るときの下塗りに一部としてうまく使うと、静脈の透けているような透明感のある肌を描けます。

ペリレーングリーン ( PBk31 ) 透明、ステイン性有り

スキャンすると色がうまく反映されず赤味が出て黒色感が増してしまいましたが、実物は写真のような暗い緑色です。(写真の色もあまり正確ではありませんが…)

印刷された色見本では黒色に見えることも多いので、この魅力に気づくには実際に自分で塗ってみるしかないです! 濃いとほぼ黒色ですが、薄めると透明感のあるグリーングレーに、かなり薄めると植物に使えそうな緑色と濃度でかなり幅広い表現ができて使いやすい色です。

ペリレーングリーンのお気に入りポイントは、植物や風景を描くときのグリザイユ技法に最適なところです! 

グリザイユ技法とは影を先に描いて、後から固有色を重ねる方法です。草むらや森など物の形が入り組んで複雑な影を作るようなモチーフでは、葉っぱ一枚一枚描くより、先に全体の影だけ描いてしまった方が塗りやすいこともあります。

今回の作例は、ペリレーングリーンとコバルトターコイズライトを混ぜた色で先に影色を塗り、後から葉っぱの黄緑色、イチゴの赤色を足しました。影の色が共通しているので全体にまとまりのある絵に仕上がりました。

ペリレーンバイオレット ( PV23 ) 透明、ステイン性有り

赤紫とも茶色ともつかないあずき色の上品な色です。肌色とのなじみがいいので、肌や髪をはじめとした暖色系の影色として重宝しています。ステイン性が高いのでこの色もペリレーングリーンと同様にグリザイユ技法と合わせて使うのもオススメです。うすーく塗った時の柔らかいピンクグレーのような色も気に入っています。

ペリレーンバイオレットのお気に入りポイントは、影色としてとても使いやすい色味であること、プラス1色の混色で黒や茶色が簡単に作れるところです。 少し温かみのある黒や茶色がすぐ作れるととても便利なため髪色によく使っています。

ポッターズピンク ( PR233 ) 半透明、ノンステイン、粒状化

強く粒状化するクセは強いものの、色味自体は薄付きのアンニュイなピンク色です。塗る紙次第で粒状化の雰囲気は変わります。クサカベのハルモニアやホルベインのグラニュレーティングカラーズなど分離色にもよく使われる色ですね。

ポッターズピンクのお気に入りポイントは、アナログ絵らしいザラザラした質感になることです。下塗りとしてよく使います。色味も穏やかなのであまり嫌らしい感じにはならず、ノスタルジックな雰囲気に仕上がります。

固形にすると溶かしにくい上に、何度も固形絵の具をこすると粒子で筆がガサガサして、筆の劣化を早めそうなのでチューブから直接使った方がよさそうです。

トランスペアラントイエロー ( P150 ) 透明、ステイン性有り

黄色は混色で作れない色なので、鮮やかな黄色い絵の具は惹かれますね。この色も塗った時「おお!」と感動しました。濃いと黄土色ですが、薄めると一気に彩度明度が高まり鮮やかな黄色になります。黄色は不透明色が多いですが、透明色だったのも珍しいですね。

トランスペアラントイエローのお気に入りポイントは、セロハンを重ねたような印象になる透明感のある色フチが(水彩境界)が美しいところです。

ちょうど違う絵の具をメインの黄色としてヒマワリを描いた2枚があるので比較しましょう。

トランスペアラントイエローを使った方(右)の絵は、色フチが強く出て、まるでセロハンを重ねたような透明感のある重色ができました。色フチについては好みが分かれるところですが、私はこの性質が気に入りました。

ではここから本番! 各色ごとに絵の具を塗ってみた感想と、上記5選以外のオススメ色、気になった色を紹介していきます。(本当は全色に対してコメントしたかったのですが、大変な長さになってしまったので泣く泣く削りました)

黄色

WNは単一顔料の黄色が豊富で、それぞれの顔料の個性を楽しむことができました。黄色はカドミウム系のイエローが強い発色で隠ぺい力があって存在感がありますが、カドミウムが気になる方向けに、似た色味でカドミウムを含まないカドミウムフリー色もあります。カドミウムフリー色も、カドミウム含有に遜色ないくらい、発色がすごくきれいで驚きました。

☆カドミウムレモン(PY35)混色では作れない明るく冷たい黄色で、とても発色が強いです。基本の絵の具の1つですね。カドミウムが気になる方はカドミウムフリーレモンもオススメです。

☆ウィンザーレモン(PY157)W&Nが指定する三原色のひとつで、社名を冠する独自色であることが売りの色のようです。色は、レモンのように冷たくなく、山吹色というほど温かくもなく、中間の黄色でとても発色がよく使いやすそうです。

☆レモンイエローディープ(PY159)…発色はやや薄付きですが、黄色にはレアな粒状化色です。黄色が分離してくる分離色によく使われる顔料で、自分で分離を楽しむ混色をされたい方にはぜひオススメです。

☆トランスペアラントイエロー(PY150)…同系色の並びの中でも個性的で目を惹きます。色フチ(水彩境界)がでやすく個性的な色ですが、混色したとき馴染みがよくて使いやすい黄色です。

☆カドミウムイエローペール(PY35)…発色が強い基本の黄色、山吹色とまでは言いませんがこっくりとした温かさがあります。パレットに黄色を一色しか選べない、と言われたら私はこの色を選びます。

黄土色

黄色より少し落ち着いた色味の黄土色。黄色と比べるとあまり目立たない色味ですが、薄めると肌色になりますし、下塗りに使って全体に温かみを増したり、黄色の代わりに使ってみるなど優しい表現が可能です。

☆ネイプルスイエロー(PW6,PBr24)…不透明のパステルカラーイエロー。黄色がまぶしすぎるとき、代わりに使ってみるのもおすすめです。落ち着いた優しい絵になります。

☆イエローオーカーライト(PY43)…定番色のイエローオーカー。イエローオーカーの色味は複数ありますが、この黄色味があるイエローオーカーライトは薄めて肌色のベースとして使いやすい色です。

どこまで黄色で、どこから橙色か迷いますが…(笑)

赤と黄色の混色で作れる中間色の橙色ではありますが、赤と黄色の組み合わせによっては彩度が下がってくすみやすい場合もあります。人物の肌や、果物・花などみずみずしいものを描くとき、単色のオレンジがあると簡単に鮮やかに塗れて便利です。

☆ウィンザーオレンジ(PO62)…単一顔料のオレンジ、黄色っぽい方。みかんの色ですね。薄めたり、この色を基準として混色すると肌色として使いやすい色味になります。

☆ウィンザーオレンジ(レッドシェード)(PO73)…単一顔料のオレンジ、赤っぽい方。混色ではこの鮮やか色は作れないですね。薄めるとコミックイラストに向くようなピンクみがかかったかわいい肌色になります

朱色からいわゆる血の赤色まで幅広い赤色があります。こちらも黄色と同様に、不透明で強い発色をお持つカドミウム色の存在感が強いですが、W&N独自のカドミウムフリーも負けず劣らず鮮やかです。

☆カドミウムスカーレット(PR108)…いわゆる朱色で、強い発色と不透明感で圧倒的な存在感です。日本の文化的なものでしょうか、この赤色はなんだか親近感の湧く赤色ですよね。カドミウムフリー色も負けず劣らずの発色です。

☆ウィンザーレッド(PR254)一番真っ赤!色です、混色では作れません。このままの鮮やかさを生かしたい色で、混色すると彩度が下がりやすいです。

☆ローズドーレ(PY97,PV19)…薄付きの上品な紅色です。このまま上気したほっぺたに使えそうでとても可愛らしい色です。

☆パーマネントローズ(PV19)W&Nの三原色の一つ。冷たい赤色です。単色ではやや馴染みが悪いですが、混色に大変便利な色です。パレットを作るとき赤色を一色しか選べないと言われたら、私もこの赤色を選びます。

☆ローズマダージェニュイン(NR9)…オススメというか、ロマン枠です。珍しい天然原料(セイヨウアカネ)で作られていて、バラの香りがするらしいという噂です。ドットカードからはあまり分かりませんでした…(笑) 耐光性も低いので実際の絵には使いにくいですが、ロマンティックな絵の具で惹かれます。

赤と青を混ぜて作る中間色の紫ですが、個性的な顔料の絵の具がいくつもあって楽しいゾーンでした。個人的に紫は大好きな色なので、全部ときめきました…。

☆オペラローズ(PR122,蛍光)蛍光色を含んでいることもあり、唯一無二の鮮やかなピンク色。お花やビビッドな色使いの絵に使うと、画面がとても華やぎます。耐光性が低いことが難点ですが、その鮮やかさからとても人気があることにも納得です。

☆キナクリドンマゼンダ(PR122)…このままの色味で使う固有色のものがあまりないので見落とされがちかもですが、インクの三原色シアン、マゼンダ、イエローのマゼンダに近い色で、混色にとても便利な色です。

☆コバルトバイオレット(PV14)…薄付きの絵の具で粒状化します。混色では作れないような鮮やかさと、淡く粒状化した繊細なテクスチャが魅力的です。アナログの絵らしさ満点の画面になりそうです。

☆ウルトラマリンバイオレット(PV15)かなり青みがかかったラベンダー色でとても繊細な印象の色彩を持つ顔料で粒状化します。分離色を作ってみても楽しそうです。

☆ウィンザーバイオレット(PV23)…個性的な絵の具が並びましたが、スタンダードな紫の絵の具と言ったらPV23のこれですね。かなり濃くて滑らかに溶けて、非常に使いやすい紫です。

空を思わせる幅広い青色が揃ったゾーンでした。これは夏の正午の空、これは高原の朝の空…と想像するだけでも楽しく塗ることができました。顔料の違い、同じ顔料でも色味の幅があることが分かりやすく、勉強になりました。

☆ウルトラマリン(グリーンシェード)(PB29)…ウルトラマリンは粒状化しやすい色ですが、グリーンシェードは粒状化しにくく滑らかで、いろんな場面で使いやすい色です。ゴリゴリした雰囲気を楽しみたいなら、フレンチウルトラマリンがいいですね。

☆ウィンザーブルー(レッドシェード)(PB15)W&N3原色の一つ。とても滑らかで着色力が強い絵の具です。澄んだ、冷たい青色です。

☆ウィンザーブルー(グリーンシェード)(PB15)…少し温かみのある青色。レッドシェードと同じく滑らかで着色力が強いですが、薄めたとき黄色味が増して使いやすい水色になるのがお気に入りです。パレットに一つしか青色を選べない、と言われたら私はこの色を選びます。

☆セルリアンブルー(レッドシェード)(PB35)…赤味の強い青色で、粒状化するモケモケ感に、思い出の中の青空を思い浮かべたときのような郷愁を覚えます。色みと粒状化の質感がエモい青色です。

☆コバルトターコイズライト(PG50)混色では作れない鮮やかで強い水色透明感と粒状化する性質が魅力的です。粒状化色なので、混色して分離させても発色が負けず、かなり印象的な分離色が作れます。

単一顔料が少ない緑色ゾーンです。緑色は風景や植物など自然のものを描く際には欠かせない色ですが、単一顔料の色味そのままではやや不自然です。そこで、自然の緑表現に使いやすいよう混合顔料の絵の具がいくつかありますね。

☆コバルトグリーン(PG50)…青色コーナーで紹介したコバルトターコイズライトと同じ顔料の色違い。神秘的な青緑色と、粒状化する質感に惹かれます。

☆ペリレーングリーン(PBk31)…色があまりうまく表現されていませんが、実物は黒さがもう少し抑えられて緑色を感じられる色です。濃く使って影を表現するのにも便利ですし、薄めると落ち着いた葉っぱの色になるのもよいです。

☆パーマネントサップグリーン(PG36,PY110)…使いやすい、光が透けたような葉っぱのような自然な明るい緑色。青と黄色と少しの赤色を混ぜても自然な葉っぱの緑色は作れますが、この色一色があると、この色を起点に赤味や青みを少し足すだけで絶妙な色が作りやすくて便利です。

☆オリーブグリーン(PY65,PB15:6,PR101)…使いやすい緑色の、暗く落ち着いた方です。花と一緒に描くときなど葉っぱ自体はそんなに目立たせなくていい時、この色味で葉っぱを描くと名脇役となります。

茶色

地面や木、動物など自然の色を表現するには欠かせない色で、豊富な色展開があります。伝統的な土顔料のPR101の幅広い色味を楽しむことができます。単色での色を楽しむのはもちろん、混色で他の色を落ち着かせる働きがあります。

☆バーントシェンナ(PR101)明るい茶色で、基本の茶色として使い勝手がよいです。このままで塗ると明るくて可愛らしい絵になりますし、その絵の中で使った他の色を混色して少し落ち着かせると木や地面など自然の表現にピッタリの色味になりそうです。

☆ブラウンマダー(PR179)…かなり赤味の強い茶色で、の紅葉のような落ち着きのある赤色として使いたいですね。

☆ペリレーンバイオレット(PV29)…ステイン性の強い暗い赤紫色で、肌色との馴染みがよく肌色の影として便利です。

☆ローアンバー(PBr7)…粒状化する質感と、控えめな黄色っぽい茶色の色味が渋いです。砂浜や地面など、ザラザラした質感にそのまま生かせそうですね。

黒、白

黒をメインにした混合色と、黒3種、白2種が並びます。一口に黒と言っても、こんなにたくさんの絵の具を作りたくなるくらい、色んな色味があるのだと改めて気づきますね。黒っぽい色は自分で混色して作ってしまうのですが、よく同じ色味を使う人は一本あると再現性高い色味が作れて便利ですよね。

☆セピア(PBk7,PR101)…文字通り、昔懐かしいセピア色。色で作れる色味ではありますが、この絶妙な色味を再現度高く作るのは難しいため一本あると便利です。黒色の代わりに使っても、絵が暗くなりすぎず良いですし、髪の毛など暗い色を塗る混色の起点に使っても便利です。

☆ランプブラック(PBk6)色味のない真っ黒な黒。混色で作った黒はどうしても色味を感じてしまいがちなので、彩度のない黒を使いたいときには欠かせない色です。

☆マースブラック(PBk6)…少し温かみのある黒ですが、特徴は粒状化する質感です。単色でもムラのある黒が雰囲気ありますし、混色して分離させても面白いです。

☆チタニウムホワイト(PW6)…基本の白。単色でつかうというより、混色で使ってパステルカラーが作れます。絵の具を薄く塗った時とは違う、不透明感のある明るい色はコミックイラスト系に向くと思います。パステルカラー、可愛らしいですよね。

最後に

絵の知識ゼロの文鳥
絵の知識ゼロの文鳥

チヨ!(いっぱい色があって楽しかったね! 印刷された色見本とは違うたのしみがあるね~)

色を試すたびに筆を洗ったり、気になった色の詳細を調べたりするので結構手間のかかる作業ですが、色んな色を自分で実際に試せるのは楽しいですよね。他のドットカードも積んだままなので、試していきたい…。

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!

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