本サイトはアフィリエイトやPRが含まれていることがあります。

紙が違うと、色はどう変化する? <水彩紙の定量化比較>

水彩紙

紙自体に色がついているナチュラル色の水彩紙は、絵の具を塗った時に紙の色が干渉して色味が違って見えることがあります。どれだけ違ってしまうのか実験して、客観的な数値に定量化して比較してみました。

このくらい色味が変わるなど紙の特性理解していたら、色んな紙が使いこなせますね…!

ナチュラル色の紙

水彩紙は様々な色味があります。漂白して真っ白なものもあれば、木材由来の黄色味が出ているものまで…。真っ白な紙に比べて、優しい印象のするナチュラルな色の水彩紙はそれだけで素敵な質感をもって魅力的に見えます。

でも、私はナチュラルな紙を使いこなせないんですよねえ…。白い紙と発色が少し違う気がして、思った通りにならないと感じることが多くて…。

少しでも使いこなせるように紙の特性を理解しようと思い、絵の具を塗った時に紙によって色がどう違って見えるのかを実験してみました。色々やってみて分かったことは以下の通りです。

・濃い色で絵の具を塗った時は、紙による色(色相・彩度)変化はほとんどない

・薄い絵の具の場合は絵の具+紙の色となり、紙自体の色と混色したような変化が起こる

・色の変化には紙自体の色味に加え、紙への定着具合によるものなど紙ごとに特性がある

微妙な色の違いは見ている画面の違いや個人の感じ方で受け取り方が違ってしまうので、ImageJという画像解析ソフトを用いて、スキャン画像から色の持つデータ(色相、彩度、明度)を数字化することで、客観的な評価を行って確かめました。

評価方法と結果について詳しく解説していきます。

使用水彩紙一覧

今回実験してみた紙はこちらの8種類です。手に入りやすいナチュラル色の紙7種と、比較用に私の知っている中で一番真っ白な水彩紙のホワイトワトソンを選びました。

材質色相
0~360
彩度
0~100
低↔高
明度
0~100
低↔高
印象
ホワイトワトソン
(比較用)
木材パルプ+コットン00100真っ白=彩度0、明度100。
ワトソン(ナチュラル)木材パルプ+コットン481096明度が低く彩度も高い分、黄色味が強く感じられる。
ワーグマン木材パルプ534100明度が高いのであまり色味は感じないが、この中で一番黄色い。
ヴィフアール木材パルプ48697ワトソンと同じくらいの色相だが、彩度が低い分そこまで黄色味は強く感じない
ウォーターフォード ナチュラルコットン46797ヴィフアールとほぼ同じ印象。
アルビレオ木材パルプ43699ややオレンジみがあるが、明度が高く色味はよく分からない
ランプライトコットン43696明度が低めで落ち着いた印象。オレンジ寄りで優しい印象。
クレスター木材パルプ+コットン41898この中で一番赤よりの色味だが、明度が高くあまり色味は感じない。
スキャナGT-X830でガンマ補正無しのリニアスキャン・紙の質感を表現しないモードでスキャンを行いました。その後、ImageJでjpeg画像を読み込み、HSBに変換しました。各値は1㎝×1㎝以上のエリアについて平均値を算出しました。
絵の知識ゼロの文鳥
絵の知識ゼロの文鳥

チチ?!(数字がいっぱいで難しいね?!)

全部一気に見なくても大丈夫!

ガッツリ色味がある紙に興味があれば彩度が高く、明度が低いものに注目するとか、

黄色よりオレンジみのある紙に興味あれば色相が40に近いものに注目するとか…。

今回使用した紙のほとんどが入ったお試しセットもあります。ハガキサイズのものは多いですが、小さくてあんまり試せないんですよね…。これはA4サイズでいっぱい試せながらほぼ1000円、お得で便利ですね。

使用絵の具

各水彩紙に以下の5色を3つの濃度で塗りました。

  • 赤(ホルベイン キナクリドンマゼンダ)
  • 黄(ホルベイン イミダゾンイエロー)
  • 緑(ホルベイン ビリジャンヒュー)
  • 青(ホルベイン フタロブルーイエローシェード)
  • 紫(ホルベイン パーマネントバイオレット)

色見本はきれいですが、いっぱいあると比べるのも大変で、目と脳が疲れて何がなんだかわからなくなってきます…笑 

これらの紙をスキャンして色を塗った部分1cm四方以上を選択範囲とし、その平均値を使って比較を行いました。

特に変化の大きかった、

  • 一番濃く塗った場合の彩度の違い
  • 一番濃く塗ったときと一番薄く塗った時の色相変化

について解説していきます。

(注意:薄めたときの変化は紙だけでなく絵の具の特性も関わってきますので、今回使用した以外の同じ色味の絵の具でも同じ変化があるとは限りません。また、紙ごとに濃度に差が出ないように作った絵の具を全部一度に塗ってはいますが、手作業のため多少の差があります。今回の違いは紙だけの違いではない可能性もあります。)

彩度の変化

濃い絵の具の場合は彩度も変化がなかったのですが、一番薄く塗ったときには紙の色と干渉して彩度が変化する色・紙の組み合わせがありましたので、紙ごとに彩度を比較しました。

ワトソン

もともとの紙が黄色いためか、赤・黄色の彩度が高くなりました。紙色と反対色の紫・青は彩度が低下してくすみカラーになっています。ホワイトワトソンとのズレが一番大きな紙でした。

クセは強いですが、同系色を重ねると色の印象が強くなり、反対色を重ねると色の印象が打ち消しあう…絵の具の重色と同じだと思えばわかりやすいですね! 苦手意識が少し減りました。

ワーグマン

ワーグマンは若干色味があるものの白色度が高く、ホワイトワトソンに近い印象です。寒色の色味が少し抑えられて、ほんの少し温かみを感じます。真っ白よりも少しだけ温かみが欲しいけれど、紙の色が干渉してくるのはイヤ!という場合に良い気がします。

ヴィフアール

紙自体の黄色味はワトソンと同じ程度のヴィフアールですが、黄色以外の彩度が抑えられて、黄色の印象が強くなりました。

ウォーターフォードナチュラル

ナチュラル色の紙らしく、赤・黄色の彩度を高めて印象を強めつつも、寒色系の彩度は下げませんでした。全体的に発色がよいのに暖かさが共存しています。ナチュラル色の紙は木材パルプ系が多い中、コットンらしい発色の良さが生きていますね。

ウォーターフォードナチュラルは、ナチュラル色らしさがありつつ塗った時の色が思い通りになるなあ…となんとなく感じていました。

全体的な発色の良さをキープしつつ、暖色の印象強化ができていることがデータで分かり嬉しかったです。オススメです!

アルビレオ

アルビレオはクセが強い紙です。暖色の発色をよくするというよりは、寒色の発色を抑えることでナチュラルさを出しているようです。そのせいか、他の紙と並べると色自体は薄い印象を受けますが、独特の滲みが存在感を出しています。

ランプライト

ランプライトも全体的に発色が良い印象ですが、青色は彩度が下がってやや落ち着いて見えます。色自体の発色は良いのですが紙自体の明度が低く少し暗いので、全体的に穏やかに見えます。

クレスター

暖色系の彩度は変わらないまま寒色系の彩度が下がりましたが、同時に色も薄くなっていますのでパステルカラーのような可愛らしい仕上がりになりました。

真っ白な紙で絵の具を薄めて塗っただけだとパステルカラーというにはビビットすぎるのですが、クレスターなら適度にくすんで明度が上がって…、とても可愛らしい仕上がりです。

彩度の比較では、コットン水彩紙の発色の良さが五角形の大きさに現れましたね。一口にナチュラルな紙色といっても、赤・黄色が強化される方向と、青・紫の彩度が下がる方向があることが分かりました。

色相の変化

色相も絵の具の濃い色では紙による違いはほぼなかったのですが、薄めたときに紙の色と干渉して変化がありました。各色ごとに紙による変化具合を比べていきます。

赤(ホルベイン キナクリドンマゼンダ)

真っ白な紙の上で薄めると、この赤はピンクよりの色相に変化する絵の具でした。一方、紙自体に色味がある場合は、薄めると紙の色が干渉してきて色味の変化が抑えられています。

黄色みのある紙で赤→ピンクの色相変化が起こりにくくなっています。絵の具の混色と同じで、ピンクよりの赤い絵の具+紙の黄色味=中間の赤(もともとの色相)に落ち着いたのではないでしょうか。

黄(ホルベイン イミダゾンイエロー)

真っ白な紙で薄めると、この絵の具は緑色っぽい黄色になる絵の具でした。先ほどの赤よりは変化は小さいですが、濃い絵の具では少し温かみのある黄色であるのに対して、薄めると冷たい印象の黄色に変化した紙も見られます。

色味の感じられる紙(彩度高く、明度低い)ではほとんど変化がありませんが、明度が高く白い印象が強い紙では色相変化が強く見られました。

緑(ホルベイン ビリジャンヒュー)

真っ白な紙で薄めると、この絵の具は青みを増していく緑の絵の具でした。赤・黄色は変化が一方向だけでしたが、緑色は紙によっては青みが増して透明感を感じる場合と、黄色味が増して温かみを感じる場合の2方向がありました。

黄色味のある紙では黄色の方へ寄って、色味のない紙では青色の方へ寄っています。赤味のある紙ではわずかに青色の方へ変化しています。

青(ホルベイン フタロブルーイエローシェード)

今までの色と違い、この青色はすべての紙で色味が変化しました。薄めると水色によって見える絵の具ですが、ナチュラル色の紙では全ての紙で水色方向への変化が大きくなりました。

赤味・黄色味のある紙両方共で水色へ変化しました。

明度の高い紙では変化は小さいようです。

紫(ホルベイン パーマネントバイオレット)

今回の5色の中で最も変化が大きくなりました。(紫だけ軸のスケールが大きくなっています)

真っ白な紙では薄めてもほとんど色相の変化がなかったのですが、ナチュラル色の紙ではすべてマゼンダ方向へ変化しました。

赤味・黄色味のある紙両方共でマゼンダ方向へ変化しました。温かみのある印象になっています。

濃く塗った際には紙の色が覆い隠されてどの紙でも変化がありませんでしたが、薄く塗った場合には薄塗り時の絵の具自体の変化+紙色が加わって思ったより色相が変化することが分かりました。

オススメのナチュラル水彩紙

絵の知識ゼロの文鳥
絵の知識ゼロの文鳥

キャルル(難しいことは文鳥にはよく分かんないよ! オススメだけ教えて!)

結構解析に時間かかったので分かってほしかったけど…。

紙の特性は優劣ではないので、目的別に向き不向きがあるよ。目的別のナチュラル色の水彩紙オススメはこんな感じ!

・ナチュラル感がありつつ素直な発色がいい→ ウォーターフォードナチュラル

・ノスタルジーな感じを楽しみたい→ ワトソン

・薄塗りでパステルカラーのような可愛らしい雰囲気にしたい→ クレスター

今回は色味だけでオススメを選びました。紙によって、滲み・ぼかしのやりやすさ、表面強度やリフトのやりやすさなど紙の特性は色々あります。色々試してみるのがおすすめです!

タイトルとURLをコピーしました