友人に贈った思い出の六甲山牧場の絵のメイキングを紹介していきます。
神戸から車ですぐ行ける距離にありながら、広大な自然と動物たちとの触れ合いを楽しむことができ、友人ととてもリラックスして過ごすことができました。あのときののどかな雰囲気を表現したいと思って描きました。
「六甲山牧場にて」
こちらの絵ができあがるまでの製作過程を紹介したいと思います。
ポイントは粒状化色の絵の具ばかりを使ってザラザラした質感を楽しめるようにしたところです。
使用画材
絵の具は以下の通りです。粒状化する絵の具にはGを表記しています。粒状化する絵の具ばかり選びました。
- ウィンザー&ニュートン ポッターズピンク (PR223) G
- ウィンザー&ニュートン ブラウンマダー (PR206) G
- シュミンケホラダム バーントアンバー (PBr7)
- ホルベイン オリーブグリーン (PY150,PG7,PBr25) G
- ホルベイン リーフグリーン (PY154,PG7)
- ホルベイン コバルトブルーターコイズ (PB28) G
- ウィンザー&ニュートン スマルト (PV15) G
全体の画像では分かりにくいですが、いたるところが細かく粒状化してザラザラした質感になっています。思い出の中の景色なので、少しノスタルジーな雰囲気が出てよかったです。
紙:アルシュ ナチュラルホワイト細目 300g厚
紙は、グラデーションや粒状化がきれいにできるアルシュを選びました。細目と言っても、一般的な中目程度なので、紙の目がほどよくザラザラしていています。粒状化がブツブツ現れすぎずよいです。
羊の部分は絵の具が乗らず、白く抜けるようにマスキングインクも使用しました。
画面構成を考える
現地で撮った写真をもとにどんな絵にしたいか考えていきます。写真を撮った日は曇りで、さえない空色に対してイキイキした緑の牧草がコントラストになった写真が撮れていました。
今回は資料に忠実な絵を目指すというより思い出の中の風景を描きたかったので、暖色よりの緑で構成しようと考えました。また、普通は遠くに行くほど青く見えますが、あえて遠くいくほど赤くなるようにしました。イメージとしては、ターナーの風景画のようなノスタルジックな光を表現したかったんです…。(できてるかな!?)
どんな色の構成にするかを小さめの紙にざっくり描いていきます。(アルシュは高いので、この段階は安い別の紙を使います)
最初は空を赤味のある青色いで描こうとしたのですが緑の部分と調和せず微妙だったので、空の色をコバルトターコイズライトにしました。また、緑の部分も陰に粒状化しやすいスマルトを使うことでザラザラした質感が出せることも分かりました。
使用画材は先に紹介しましたが、実際に描くときはラフスケッチをいくつか描いてどの絵の具を使うかを絞り込んでいきます。
下書き~マスキング~下塗り
水彩色鉛筆で丘の稜線を描きました。あまり形に囚われないで描こうと思っていたので、林の木などは特に描いていません。稜線は地面を表すラインのため変に曲がると違和感のある絵になるため、稜線だけはきちんと描きました。
その後、羊に色が乗らないようにマスキングしました。マスキングの精度が悪く、あまり上手に形が取れませんでした…。
マスキングが乾いたら、ザラザラした質感と暖かい色味を出すための下塗りとして薄目のポッターズピンクを全体に乗せていきます。最後までザラザラ感が残っていい感じでした。
本塗り
空と地面を塗ります。空はともかく、地面はほとんど丘や林で上書きされてしまうのですが、先に赤茶色を塗っておくことで緑が浮かずになじみます。
丘と林を塗っていきます。日が当たる明るい部分、遠い部分は明るい緑で塗っていきます。丘の緑色の絵の具は薄目なので、先ほどのブラウンマダーが適度に透けて暖かい印象です。
丘と林に茶色を足して遠近感を出していきます。ブラウンマダーの赤茶色が緑色にもなじんでとてもいい感じです。
マスキングをはがして細部描きこみ
林だか、植え込みの茂みだか分からない緑の塊を林っぽくするために幹を描き加えます。ざっくりした風景画では枝葉より、幹が重要です。描いておけばそれっぽくなります。絵の具が完全に乾いた状態でマスキングをはがしてから羊に色を乗せます。
便利アイテム・サイズ見る用のマット
最後に、便利アイテム・既成額に合わせたマットを紹介します。
サイズ感を見るためだけに、額のサイズにあわせてマット幅を設定したマットを手元に置いています。額屋さんでお願いすればすぐに作ってくれます。
最初は自分で紙を切って作っていたのですが、薄い紙だと曲がったり折れたりしてしまうのと、厚紙だと自分で切るのが大変で、いろいろなサイズをそろえるならお店で頼んだ方が簡単でした。サイズやお店によりますが大体300~500円程度でできます。
額装時のサイズ感が分かりやすいのと、実際見える幅より広めに絵を描くことが多いので構図の確認にとても便利です。お店の人に額装を頼むときにも、これを持って行って説明すれば絵のどこを切り取って仕上げてほしいのかが一目で伝わり、「これ便利ですね!」と言っていただけました。
今回は最後に構図を切り取りのに散々悩んでいました。最初の想定では、①のイメージだったのですが、②も③もそれぞれの良さがあって…。最終的には、友人に贈って部屋に飾ってもらうことを想定していたので、部屋に置いても目を引きすぎないよう安定感のある②の構図で仕上げました。
完成!
というわけで額装をお願いして完成です! 落ち着いた雰囲気にしたかったので、マットはベージュにしました。額は、絵の中にもある深い緑色と、絵のザラザラした質感に合う汚し加工の入った金属のある額にしました。(額縁のタカハシ:一般額5902グリーン)
反省
・羊が巨大!
米粒みたいに羊を描くより、羊!という感じにしたかったので実際の写真よりも、大きめに描きました。林の幹とサイズ感を比べると、超巨大羊に見えますね…。