祖母の家にとてもかわいい猫がいます。その子を描いた絵の製作過程です。今まで何度も描いてきましたが、何回描いてもやっぱり本物にはかないませんね。
「見返り美人」
こちらの絵ができあがるまでの製作過程を紹介したいと思います。
使用画材
使用した絵の具は以下の通りです。(色見本の紙が風邪をひいているため色の雰囲気が少し違います)
- ホルベイン イエローオーカー (PY42)
- シュミンケホラダム バーントアンバー (PBr7)
- ウィンザー&ニュートン キャプトモータムバイオレット (PR233)
- ホルベイン キナクリドンマゼンダ (PR122)
- ホルベイン リーフグリーン (PY154,PG7)
- ウィンザー&ニュートン スマルト (PV15)
- ホルベイン サップグリーン (PY150,PG7,PR122)
ふわふわの毛並みを滲みで表したいと思い3色の茶色を使用しました。キナクリドンマゼンダは耳や鼻の血色を表すために。サップグリーンは瞳に。スマルトは茶色と混色して黒色を作るために選びました。キャプトモータムバイオレットとスマルトは粒状化色です。画面の大部分が茶色で構成される絵のため、ザラザラしたアナログ絵らしいマチエールを作りたいと思い選びました。
紙:ランプライト 300g厚
下塗り
画面全体に水を引いて、半乾きの状態にします。こうすることで次の滲みで描く行程で、紙が乾くのが遅くなり作業する余裕が少し生まれます。
大胆に3種の茶色を置いていきます。乾いてからでも色を取り去りやすい(リフティングしやすい)紙を使用しているので、色が広がりすぎることを恐れないで滲みを楽しみます。
塗り① 水筆でのリフティング
下塗りの色が少し乾いたところで、水だけを付けた筆でリフティングをして形を整えます。首周りの白い毛のあたりに水をいれ、耳にとがったタッチを加え、一部色を取り去って膨らみすぎたシルエットを修正します。
塗り② 乾いた筆でタッチをいれる
全体に乗せた色がギリギリ乾くか、乾かないか、というところで、乾いた平筆で毛並みに沿ってなぞり、色を伸ばしながら毛の表現をいれます。
塗り③ 遊びをいれる
絵らしさが欲しいと思い、絵の具を垂らしてみました。振り返ってみると、後半ほとんど修正されるので、なくてもいい行程でしたね(笑)
塗り④ 整える
色を置く→半乾きのときに水筆、乾いた筆でタッチをいれる。を繰り返して色と形を整えていきます。この間、結構形が変わります。背中が丸まって見えたり、背筋を伸ばしているように見えたり…。
後ろからみた丸い背中の雰囲気が出ずに困っていたのですが、背骨に沿ったタッチをいれることで丸みが出ました。ほとんど整ってきた辺りで、目や手足を描き入れ完成に近づけていきます。
細部
顔の変遷です。一番目が行くところなので、密度高くなるよう少しずつ色を重ねて瞳孔や縞模様を書き込んでいきます。最後に、ひげを描き加えていきます。個人的にはひげの毛穴を描くのがリアル感が増すので大好きな作業です。
ちなみに、前足の位置を少し修正しました。一度水を付けた筆で擦って色を落とし、乾いてから前足を書き直しました。この紙はランプライトという、リフティングが容易な紙なのですが、修正が効くのが嬉しいですね。
完成!
額にいれて完成です。額装はお店で色々迷ったのですが、ゴージャスな猫さんなので、少しメタリックセピアな枠(額縁のタカハシ MH-212H)と、ベージュのもみ紙風のマットで仕上げました。額装ってやっぱりいいですね! 完成度が上がって見えます。
反省
下書き時点でのデッサンが甘い!(泣)
この紙は修正できる紙だったのでよかったのですが、まさかあんなに前足の長さを修正することになるとは…。下書きの時点で気づければよかったのですが…、反省です。
無駄行程が多い!
ドロッピング(絵の具を垂らすこと)は絵の雰囲気に合わなくて、後から全て毛のタッチで上書きして消しました。もっと引き算の絵が描きたいですね。