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カラーチャートを見てみよう!<透明、ステイン、粒状化などの記号>

画材

絵の具本体やカラーチャートに書いてある絵の具の性質についての解説します。

各社で表記の揺れや表記自体がなかったりしますが、書いてある場合の項目としては大体同じようなものです。今回は、一番よく見かけるホルベイン(H)の透明水彩絵の具を例に挙げながら解説していきます。

(*文献から独学で学んだ内容が多いため、間違っている部分もあるかもしれません。ご了承ください。)

カラーチャートの記号に注目!

カラーチャートや絵の具本体に記号(*、〇、■など)が書いてあることがあります。

記号の意味はメーカーによって異なるので、カラーチャートをよく見て確認してください。下の写真はホルベインのカラーチャートの例です。

絵の知識ゼロの文鳥
絵の知識ゼロの文鳥

シュバッ

絵の知識ゼロの文鳥
絵の知識ゼロの文鳥

キャルル(難しい言葉が多いよ! 文鳥にも分かるように説明してよ!)

あ…、また些細な事でキレる文鳥さんが来てしまった…。

上からひとつずつ解説するね。

堅牢性(ホルベインの場合*の数)

絵の具の変色しにくさ、色あせにくさを示すのが「堅牢性(けんろうせい)」です。

ホルベインでは*の数が多いほど堅牢性が高く、最大の「****」は永久不変色とされています。一方、「*」は室内ですら飾っていると変色が分かるほど変色しやすい色とされています。

メーカーで記号に違いはありますが、たいていのメーカーは変色に関する表記があります。蛍光色など特に変色しやすいものは長く飾るための絵には使わないなど注意が必要な場合もあります。

透明/不透明(ホルベインの場合、〇や●)

絵の具の透明性を表す記号が書かれている事もあります。ホルベインの場合、〇は透明で●は不透明とされています。

絵の知識ゼロの文鳥
絵の知識ゼロの文鳥

キャルル(透明水彩なんだから絵の具は全部透明でしょ!?)

透明水彩でも、絵の具を重ねたときの隠ぺい力(下の色を隠す力)が強いものは不透明性があると表記するんだ。

透明性/不透明性の絵の具について理解しておくと、塗り重ねたときに最終的にどんな色になるかがある程度予想がつき、思ったとおりに色をコントロールすることができますね。

透明水彩なので、不透明の絵の具といえども下の色はある程度は透けるものです。本当の不透明水彩(ガッシュ)とは全然違います。

ちなみに…、透明水彩と不透明水彩(ガッシュ)の違いは顔料の量が違います。不透明水彩(ガッシュ)の方が顔料が多く、乾いた時に下の絵の具の層を覆い隠してしまうので不透明性があるのです。

ノンステイン/ステイン(ホルベインの場合□や■)

ステインとは日本語にすると「染み込む、色が付く」といった意味です。絵の具の紙に染み付きやすさを表します。ホルベインの場合、ステイン性が弱い(ノンステイン)と□、ステイン性が強い(ステイン)と■で表されています。

実際にステイン性の違いを試すために、絵の具を塗った後24時間以上乾燥させてから水を付けた筆で20回擦ってみました。

今回は過激に20回も擦りましたが、ノンステインの絵の具は少し水や絵の具を重ねただけでもすでに塗ってあった絵の具が溶け出てくる場合もあります。重ね塗りをする際には注意が必要ですね。

ステイン性の違いには、絵の具自体の性質はもちろん他の要素も絡んできます。一番大きいのは紙の性質ですが、乾燥方法の違いでもステイン性に変化がみられることもあります。

自然乾燥すると水分が蒸発するまでの時間が長くなるため、絵の具の粒子が紙の中に染み込みやすいと言われています。そのため、色が少し沈んで見えたり紙の色で白っぽく見えますが、ステイン性は高まります。

一方、ドライヤーで急速に乾燥させると、絵の具の粒子が紙の中に染み込む前に乾いてしまうため、紙の表面にとどまる粒子が多くなります。染み込んでない分、絵の具そのものの色が強く感じられ鮮やかに見えますが、色落ちしやすくなります。

ステイン性の違いでできること

ステイン性がある/ない絵の具ではできることが異なります。

ステイン性がある絵の具なら、先に影を塗ってから固有色を塗るグリザイユ技法が可能ですね。また、どんどん色を重ねることができるので、重厚な画面作りが可能です。

絵の知識ゼロの文鳥
絵の知識ゼロの文鳥

ピポポ!?(せっかく塗った色が溶けちゃうのはイヤだから、ステイン性の高い絵の具で揃えようかな!?)

それもいいけど、ステイン性の弱い絵の具にもいいところはいっぱいあるよ!

水を付けた筆で画面の絵の具を擦れば色が取れる(リフティング)ができます。画像は同じ回数擦ったものですが、絵の具によって色の抜け方が違いますね。

リフティングができれば、はみ出したところを修正したり、ハイライトや別の色を後から入れたりできます。後から修正できるのは、基本的に「ctrl+Z」でやり直しがきかないアナログ作業ではありがたいこともあり、初心者の方には嬉しいですね。また、ステイン性の弱い絵の具特有の重色時の柔らかさも魅力的です。

粒状化(ホルベインならG)

絵の具によっては、上記の記号以外にも「G」と書いてある絵の具もあります。これは「粒状化」する絵の具のことで、粒状化は英語だと「Granulation(グラニュレーション)」というのでその頭文字を取っているのです。

グラニュー糖のグラニューですね、グラニュー糖のように粒が大きくざらざらしたイメージです。

絵の具を塗るときには均一に見えても乾くまでの過程で粒子が凝集し、ざらざらとした質感を生み出します。混色の場合だと、色が粒状化する絵の具の粒子が分離してくるのでよくわかります。

粒状化は、アナログの絵らしいマチエールを与えてくれる素敵な現象です。一方、人の肌や澄んだ空など均質に塗って透明感を表現したいものがある場面ではノイズになるかもしれません。同じ色味でも、粒状化するもの、しないものを持っていると表現の幅が広がりますね。

粒状化して色が分離することに特化した「分離色」の絵の具もあるよ。

塗ってから色が変わるので、思わぬ色が出て楽しいよ。アナログの醍醐味だね。

分離色はクサカベの「ハルモニア」というシリーズが有名です。スキャナでは伝わらない魅力がたくさんなので是非ご自分で試してみることをお勧めします。

絵の具の毒性注意記号(ホルベインならCL,×)

絵の知識ゼロの文鳥
絵の知識ゼロの文鳥

……チチチ(のどが渇いたなぁ…あっ、こんなところにお水が…!)

あっ、筆洗の水を飲んじゃだめだよ!

ちゃんと絵の具の表示をよく読んでみて、口にいれないでって書いてあるよね。毒性の表記がある絵の具もあるからね。

文鳥さんには注意しましたが、現在市販されている絵の具に使われる顔料は、安全な化合物になっていたり、有害物質も微量で現実的に害を及ぼすほどではないためすぐさま危険という訳ではありません

チューブ入りの絵の具がない時代は画家は絵の具を原料から自作していました。その過程で原料の毒性への知見が足りないために、有害物質に長い期間さらされることもあったそうです。白色に使われる鉛で中毒症状になる画家もいたというのは有名な話ですね。

カラーチャートの小さな記号だけでは情報不足だと感じる方は、安全データシート(SDS)を確認してみましょう。SDSとはその製品を使う人のために製品に含まれる物質の安全性について情報を提供するためのものです。ホルベインの場合はホームページで確認できました。

仕事で本当に危険な薬品を扱うこともあり日ごろSDSをよく見ている者として個人的な意見ですが、絵の具のSDSを確認したところ、常識的な使用の範囲では特に問題ないと感じました。

環境問題や安全性への志向性がある方は配慮して製品を選ばれるとよいと思います。

例えばクサカベのように重金属化合物を含まない絵の具のシリーズを展開しているところもありますし、W&Nのように従来品と同様の色味を出せるカドミウムフリー色の展開があるところもありますね。

人体に基本的に無害な範囲のものとはいえ、メーカーが説明するように食べたり、目にいれたりすることは避けてね

絵の知識ゼロの文鳥
絵の知識ゼロの文鳥

バサッ(ふーん、じゃあお水飲みに帰ろーっと)

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